彼の母親は身体が弱かったので終戦からひと月程でなくなった。
父親は敗戦のショックで呆然自失となっていた。
当時五木寛之氏は12歳 家族を支える者は自分しかいない。まだ赤ん坊だった妹を背中にくくりつけ5歳の弟を引きずってにげた。
外出禁止令が出る中トラックを買収してもらって38度線を目指した。
1度目の脱出は失敗。
2度目の脱出でガードポイントを突破する時それまで何度も止められその度に時計や万年筆などの貴重品を渡して見逃してもらった。
それが次は女を出せと言われて皆本当に困った。
子持ちはダメ 年寄りもダメ という事で結局元芸者さんなどの水商売していた女性や未亡人に皆んなの視線が集中した。
リーダー役の人物が土下座して「皆んなのためだ行ってくれ」と言って頼んだ。
女性は出て行かざるを得ない。
そうやって送り出した側の人間が生き延びて帰ってきたのだから
生きて帰って来た人間には何処か負い目があった。