満洲日記

今年88歳になる従姉妹の満洲で生まれ引き揚げて来るまでの記録です。

悲しい時は悲しい歌を

女優の森光子さんは戦争中歌手として

大陸のあちこちの街を慰問講演して回っていた。

リクエストで一番多かったのは「湖畔の宿」

明日は最前に出かけてゆく生命も知れない兵士が戦意高揚歌ではなく

♪ 山の寂しい湖に一人来たのも悲しい心

という湖畔の宿を聞きたがった。

淡谷のり子さんも同じような事を言われている。

将校は前向きな歌を歌えというが

リクエストで圧倒的に多かったのは

別れのブルース

♪ 窓を開ければ港がみえる…

という切ない歌を聞いて前線に出かけてゆくと言う。

ギリシャ悲劇にも「涙は魂を浄化する」

と言うカタリシス理論がある様に

悲しい時(人)には悲しい歌

が必要らしい。